プロダクションノート

個性ある役者たちの共演が導いたエミーへの階段

☆ 美術監督池田繁美 エミー賞受賞という朗報!

2009年9月12日アメリカ、ロスアンゼルス、NOKIA Theatre。「Shigemi Ikeda」の名が発表された。
それは第61回プライムタイム クリエイティブアートエミー賞(Prime Time Creative Arts Emmy® Awards)において、
『AFRO SAMURAI RESURRECTION』美術監督池田繁美(アトリエムサ所属)が、同賞アニメーション個人部門審査員賞を受賞を見事成し遂げた瞬間である。
『AFRO SAMURAI RESURRECTION』は、同賞作品賞長編アニメーション番組部門にもノミネートされ、米国海外ドラマ最高峰の賞であるエミー賞で日本アニメが高く評価される結果となったのである。

☆ サミュエル・L・ジャクソン、ルーシー・リュー:ハリウッドメジャーたちから受けた愛情

池田氏のエミー受賞を誰よりも一番に喜んだ人物、それが、アフロを演じるハリウッドでも指折りの個性派俳優サミュエル・L・ジャクソンである。
『アフロサムライ』の制作に関わる日本人クリエーターを誰よりも尊重し、応援し続けるサミュエルは、受賞のニュースを聞くや否や、GONZOスタッフから池田氏の住所を聞き出し、真っ先にお祝いのプレゼントを贈った人物である。
もともと三船敏郎の時代劇映画を見ていただけでなく、道義、忠誠心、義理といった武士道精神が好きで、剣術にも精通していたサミュエル。
彼がこのプロジェクト参加に際して発した言葉「俺が『アフロサムライ』だ。」は有名であるが、そんな彼が作品への理解と愛情を示してくれるからこそ、本プロジェクトが米国で高い評価へつながったと言えるのである。 そして、女性の敵役として、作品に魅惑の華を添えたルーシー・リュー。ルーシーは、『キル・ビル』出演時にクエンティン・タランティーノから、徹底的に日本アニメの良さについての教育を受けており、アニメが好きなだけでなく、何よりも『アフロサムライ』のファンであった。
そのため、金曜日にオファー、月曜日に快諾の返事、そして水曜日に収録突入という制作スタッフも予期せぬ早業で彼女の参加が決まった。
そして、彼女は、キャラクターの心情へ深く入り込み、クライマックスシーンを演じる際、「自分でも驚いたことに感情が高ぶり、シヲのように自分の涙もこぼれ落ちた。」と言うように、復讐への執念を燃やすシヲの悲しい結末へ気持ちが投影されるほど、本作品へ熱く取り組んでくれたのだ。

☆ もう一人のアフロサムライ ヒップホップ界のカリスマThe RZA

サミュエル・L・ジャクソンと双璧をなすもう一人のアフロサムライ。それが音楽のTHE RZAである。
「アフロサムライはアーバンカルチャーのエポックとなるべき作品」だと、熱い意気込みで音楽制作に臨んでいるように、彼は脚本段階から音楽のイメージを膨らませ、本作では特に女心を意識し、劇伴「Fight for you」の中で復讐心あふれる女性の持つ怒りや悲しみ、せつなさを見事に表現したのである。
またアジア楽曲も意識して、太鼓や打楽器を多く取り入れるなど、ヒップホップの枠にこだわらない音楽表現を追及していることも忘れてはならない。

☆ 名だたるハリウッドメジャーの心を突き動かした三人の日本人サムライ!

原作者岡崎能士の描くキャラクターはどれも独創的である。大学時代に見た「ソウルトレイン」のTV放送で“アフロヘアー”の虜になり、本人が大好きだった時代劇の要素を取り入れ描き出したアフロヘアーをなびかせたクールな黒人サムライ、その奇抜なキャラクターが、国境を越え、ハリウッドだけでなく、米国中のファンを瞬く間に呑み込んだのだ。
そして本作でも、日本の伝統芸能キャラクター、ひょっとこ、能面、獅子舞をアンドロイド化させ、和の伝統とSF感を絶妙なバランスで癒合させ、キャラクターに新たな「クールさ」を生み出し、全米の若者を熱狂させ続けているのだ。
美術監督池田繁美の描き出す傑出した世界観は、エミー賞審査員を圧巻した。もともと描き込みの量が多く、緻密な美術設定の制作者として定評のある池田。参ノ字の賭場の外観屋根は、雲の中を進む戦艦大和をイメージして描くなど、本作品においてワイルドさを追求し、また、カルチャーギャップの要素を積極的に盛り込むなど、観客へ“驚き”を与えることを命題として制作に望み、その美術力は、エミー賞審査員満場一致での選出という評価を与えられたのだ。 そして、独創的な岡崎の世界観をアニメーションという映像手法を使って飛躍させた本作の監督木﨑文智である。
彼は前回意識したサムライアクション映画というフレームを、今回は一切外すことで、原作の奇抜な世界観をより引き出させようとした。
ヒップさ満載なオープニングや、ヒップホップ音楽に載せて人々が阿波踊りをする中盤のねぶた祭りのシーンは、これまさに原作の独創的かつ奇抜さを表した代表シーンである。
さらにダイナミックなアクション描写に定評のある木﨑だから作りあげることができた、作品冒頭の橋の上の壮絶なバトルシーンやクマのバイクアクション、ひょっとこ、能面、獅子舞たちとの死闘などの数々のアクションシーンは、ハリウッドメジャーをうならせたのだ。

☆ エミー賞受賞がもたらす日本アニメの可能性

本作品におけるヒップホップと時代劇という一風変わった世界観は、見事なバランス感覚で融合され、観客に説得力のあるものとして届けられる出来栄えとなっている。
それが実現できたのは、本作が日本で企画・製作し、数々の日本を代表するトップクラスのアニメーターの力を集結し、制作された日本発のアニメーションであるからだ。
そして、そんな作品が今回エミー賞受賞という結果をもたらしたことは、日本アニメーションの実力の高さを証明するだけでなく、世界的な情報ボーダレス社会において、今後、さまざまなカルチャーと融合しながら、一つのグローバルスタンダードを生み出す新しいステージへ進化していることを示していると言えるかもしれない。


北米放送実績
『AFRO SAMURAI』
 SPIKE TVにて2007年1月4日より全米放送。
 ※ SPIKE TVとは全米9600万世帯をカバーする北米のケーブルTV局。166万人が視聴.

『AFRO SAMURAI RESURRECTION』
 SPIKE TVにて2009年1月25日より全米放送。
 ※ 170万人が視聴し、現在パート3制作のオファーが来ています。

北米以外の放送実績その他
『AFRO SAMURAI』
 UK; Bravo TVにて2007年5月に全国放送。
 France; Canal Plusにて2007年6月に全国放送。
 Poland; Canal Plus Polandにて2008年10月に全国放送